つれづれなるままに。ごくありふれた日常ですが、気の向くままにつづっていこうと思います。


by aoi_oi
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遊び文というカテゴリ

"遊び文"というカテゴリを作りました。
一言でいって創作です。
でも詩よりは長いので、別カテゴリを作ってmore処理に
することにしました。
気が向いたときに 好きなように書いていこうと
思ってます。まさに"遊び文"(?)。

よろしかったらご覧ください。





彼女は買い物の途中で雨に降られた。
予定の5ヶ所の店をまわっているうち、3ヶ所目くらいから
なんだか雲行きが怪しいなとは思っていたのだ。
朝の天気予報での降水確率は午前10%、午後30%。
タカをくくって、正午あたりから干した洗濯物もそのままに
彼女は出かけてきてしまったのだった。
急ごう。
自転車のペダルを踏む彼女の足が、速くなった。

彼女が5ヶ所目の店で夕飯の買い物をしているときに
雨は降り出していたようだ。店を出たとき、自転車のサドルに
雨粒が3滴ほどかかっていた。まだ 本降りじゃない。
でも、この風や空気の冷たさはあきらかに強く降りだす前ぶれだと
思われた。
家まで自転車で15分ほどの距離。
急げば、そんなに濡れずにすむ。
なにより 今日の買い物の荷物が濡れるのがいやだった。
全力を出し切るつもりで、彼女は自転車のペダルを踏み出した。

最初はぽつぽつだった雨足は、だんだんとリズムを帯びながら
数を増やしていく。
自転車を漕ぎながら彼女は気付く。
道行く人みんなが急いで見える。
もちろん、傘をさしている人はそうでもないが、あいにく傘の準備が
なかった人はみんながみんな、「ここで急げば間に合うから」
といった表情をしているような気がする。
1点を見つめ、心持ち肩を少しすくませながら、前のめりになって
先を急ぐ人々。自分も他から見たら同じような体勢なのだろう。
そういえば、こんな風に雨の中あせって帰るのは何年ぶりだろう。
仕事をしている時は車に乗っていたから、雨なんて関係なかった。
学生の頃は、雨に降られたら降られたではしゃぎながらずぶ濡れに
なる友人たちばかりだったから、のんきにそのまま濡れていたり
したものだった。
車もなく、のんきに濡れてばかりもいられなくなった今、こうして
必死に自転車を漕いで家路を急ぐ私がいる。
夕飯の材料を濡らしたくないから。
干していた洗濯物が気になるから。
我ながら、ずいぶん所帯じみたもんだな、と自嘲気味に思っているうちに
家に着いた。

洗濯物はあまり濡れていなかった。
室内にとりこんで扇風機をかけ、買い物の荷物をほどき、その中から
おやつに買ったメロンパンを取り出して切り分け、皿に盛った。
やかんに火をかける。お湯が沸く間に着替える。ハーブティを入れる。
席につく。
やっと落ち着いた。
ハーブティを飲み、パンを食べているとふと思い出した。
あの、雨が降る前のひんやりとした空気の中に漂っていた
くちなしの花のやわらかなにおい。普段の濃厚さとはまた違った
涼しげなにおいに、それは変化していたように思える。
全速力で走ったあのスピードの中と、雨降る直前の空気の中だったからこそ、
普段のまろやかな香りとは違う表情を見ることができたのではないだろうか。
おもいがけず夏の花と雨のとりあわせの妙を見ることができた、と
ほのかな満足感の中で、彼女は2杯目を飲むために席を立った。

雨はまだ降りつづいている。
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by aoi_oi | 2005-07-07 17:07 | ・遊び文